マンションの管理組合の皆様へ
財団法人 マンション管理センター
マンションの長期マネジメント計画策定の手引きより抜粋
長期マネジメント計画
長期的なマンションの管理運営の方針並びにハード的な維持管理及び
ソフト的な組合運営の取組に関する長期的な計画の提案
01
経年によるマンション管理を考える
- 経年によるマンションの変化と、居住者、所有者も年齢が上がったり、入れ替えが進んだり、生活スタイルや生活状況も変化することにより管理組合の運営もそれらの影響を受ける。
- その様な変化に対応して快適なマンション生活の実現のため建物の共用部分のハード的な維持管理と共同利用が適切に行われるためのソフト面での管理を適切に実施する必要となる。
- そのためには、将来的にどういう変化が生じ、どんな課題が出るかを想定して、準備する。
02
長期修繕計画をどう見直すか
- 長期修繕計画は25年~30年程度の計画期間に推定される補修・改修工事を洗い出し、実施時期と推定工事費を見積、工事を円滑に実施できるようにする。
- 築後20年~40年以上経過した時点で見直す際には建物や設備の機能の水準を高めるための改修工事、グレードアップ工事も考慮する。
- 補修工事よりも工事費はかさみ、長期修繕計画にグレードアップ工事をどう反映させるには、将来的にマンションをどう使っていくかという基本的な方針がないと決めることが難しくなる。
03
長期修繕計画だけで十分か
- 長期修繕計画は建物の共用部分のハードに関する25年~30年の修繕計画の期間を超えた時期に多額の工事費を要する工事が想定されていても、それは反映されていない。
- また、ハード面の計画としての側面が強いため、管理運営のソフト面の中長期的な課題の把握や、その課題解決のための取り組みは含まれていない。
- 理事の任期が1年から2年程度が多いため、短期的な課題の解決に意識が向きがちでその時点の管理運営の方向がマンション管理の将来に支障とならないかの観点も必要になるが、そのためには将来の方向について議論されていることが必要と思われる。
04
マンションの将来を
どう考えるか
- 定住意識を持った区分所有者は住み続ける間、マンションがどう維持管理されていくのかに関心があり、自身の生涯設計を考える上でも、マンションの生涯設計がどうなるのかは重要な関心毎になる。
- また、建物を自分が住んだ後に次の世代に適切に引き継ぐことの重要な視点になる。相続、売却にしても不良な状態では引き継ぎ手がない可能性もあり、耐用年数の長い良好な住宅ストックとして利用されるにはどうすればよいかも考えることが望まれる。
- 将来的に建て替えを想定するマンションについて、その可能性があるか、あるとすればいつ頃なのか等も事前に検討し、その時期を漠然としてでも設定できれば、それに合わせた生涯設計を組むことができる。
- マンションの置かれた状況をちゃんと認識し、それに基づいて長期的な展望を検討することが、より良いマンション管理を行う上で重要になってくると考えます。
05
マンション管理に関する
区分所有者の意識の共有化
- 長期的な目標を設定することがマンションの管理運営には非常に有益ではあるが、理念的な目標を掲げるだけではなく、実現するために必要と思われる取り組みについても併せて検討する。
- マンションの長期的な運営方針とそれに相応する修繕・改修のマスタープラン(ハード)及び区分所有者、社会環境の変化を勘案した組合運営の取り組み方策(ソフト)を一体としたものを「長期マネジメント計画」と定義し提案する。
- このマンションで今後何が起きるのか想定し、マンションを将来どういう姿にするのか、そのためにいつ頃何をしなくてはいけないのかを区分所有者が共通に理解できることが長期マネジメント計画を策定する目的とする。(マンションのビジョンの検討)
06
長期修繕計画とハード及びソフト両面の
課題意識のマネジメント
- 長期マネジメント計画は長期修繕計画よりも内容、期間とも幅の広いものになる。計画の要素も不確実なものが多くあるため、遠い将来になるほど時間の幅や選択の幅が広くなる。
- 中長期的な目標・運営の方針とそれを実現するための取り組みを区分所有者間で共有することにより、各区分所有者、管理組合として将来起きる事態に備える。
- 一旦策定したものを金科玉条(重要な規則、守るべき決まり)とするものでなく、計画の進捗状況の確認とマンションを取り巻く状況の変化などを把握して適宜見直しを行うことが必要と思われる。
長期マネジメント計画の
計画要素
-
中長期的なマネジメントの方針・長期ビジョン
*単一のものとせず、初めの10年の目標と次の20年の目標等期間によって変遷するもの
-
個別課題とそれに対する取り組み
*建物の共用部分だけでなく、専有部分も含む。
*重要な課題については、短期的な取り組みも含めて考える。
*マンション自体が持つ内的要因、外的要因また、これまで取り組んできた履歴等、客観的な裏付けに基づいて検討する。
-
取り組みに対する将来スケジュール
*いつ頃実施するかを想定します。
*関連する取り組みであれば、着手する順番などがわかるようにする。
*いつ頃何をしなければならないか、何が起きるのかということをあらかじめ区分所有者が共有することでそれに向けた、準備や心構えができる。
-
中長期的の推定修繕工事項目、価値向上などのための改修工事内容及び概算工事費
*長期修繕計画の計画期間を超える期間も含む改修工事の内容及びその概算工事費を明らかにする。
(精度の高いものではなく概算) -
実際には、できるところから手を付けて、時間をかけて作り上げることも大切です。
期待される効果
直接的な効果
*中長期の取り組みの円滑な実施
*中長期的な視点で一貫性を持った管理運営に取り組むことができる。
①管理組合の毎年度の事業は総会決議を経た事業計画に基づき実施されますが、その事業が中長期的な取り組みの方向と矛盾しないかどうかの判断根拠になります。
新しい取り組みを実施する場合でも、その方向性については、長期マネジメント計画で事前に区分所有者へも周知されていますので、事業計画に対する理解も得やすいと考えられます。
②計画の中でどういうマンションを目指すかの共通理解が生まれれば、現状の長期修繕計画に載っていない改良工事や計画期間外の大規模な修繕工事の必要性が認識されたり、建物の利用を中止するめどが設定されたりすることにより、それに対応して長期修繕計画を見直す根拠となります。
間接的な効果
* 中長期の取り組みの円滑な実施
*中長期的な視点で一貫性を持った管理運営に取り組むことができる
①マンションの置かれている客観的状況の把握ができる。
検討過程の中で、マンション内外の客観的な情報を収集・整理していくのでマンションの置かれている状況を認識することができる。
②マンションの将来像を想定できるため、それに合わせた生活設計を考えることができる。
住み替えるとしたらいつのタイミングか、住み続けるとしたらいつリフォームするか将来的な管理費や修繕積立金の負担は可能か等、マネジメント計画から得られる情報をもとに考えることができる。
③区分所有者の将来意向の把握、マンション全体をどうするのかは個々の区分所有者の意向の集約で決まります。年齢、家族構成、生活スタイルが異なるので考え方も異なる、アンケートなどにより、幅広い考えがあることもわかり、それを理解したうえで自分はどうするかといういうことを考える事ができる。
④コミュニテイの一体感の醸成する手段として全体の将来像を共有しているという意識を持ち、重要な事項について合意形成を図り、円滑に遂行するために区分所有者間のコミュニケーションが重要となり、日常の管理意識の円滑化も期待できる。
⑤マンションの利用限界に対する意識喚起、最終的には建替えなり、敷地売却をすることになると考えられ、その時期を決めるには難しいとと思われるが、○○年後には利用限界が来ると想定しておくことも可能だと思われる。計画の策定の中で、利用限界を記載することはできないにしても議論をすることができれば利用限界に意識をもってもらえる。
⑥検討段階の資料、策定された計画が役員活動の参考資料になる。計画の策定過程で得られた情報や検討の根拠として整理された詳細な情報は任期1年~2年で交代する役員の有効な資料になる。
⑦長期マネジメント計画を策定していること自体が、良好な管理運営の証となり、資産価値の向上に繋がる。
管理計画認定基準・確認対象書類
分譲マンション管理計画認定基準
①管理組合の運営
*管理者が定められている
*監事が選任されている
*集会が年1回以上開催されている
②管理規約
*管理規約が作成されている
*マンションの適切な管理のため、管理規約において災害などの緊急時や管理上必要な時の占有部の立ち入り、修繕時の履歴情報の管理などについて定められていること
*マンションの管理状況に係る情報取得の円滑化のため、管理規約において管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付(又は電磁的方法による提供)について定められている。
③管理組合の経理
*管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理が行われている
*修繕積立金会計から他の会計への充当がされていない事
*事前の事業年度の終了時点における修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内であること
④長期修繕計画の作成及び見直し等
*長期修繕計画が「長期修繕計画表品様式」に準拠し作成され、長期修繕計画の内容及びこれに基づき算定された修繕積立金額について集会にて決議されておること
*長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われている事
*長期修繕計画の実効性を確保するため。計画期間が30年以上で、かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるように設定されている事
*長期修繕計画において将来の積立金の徴収を予定していない事
*長期修繕計画の計画全体での修繕積立金の総額から算定された終戦積立金の平均額が著しく低額でない事
*長期修繕計画の計画期間の最終年度において、借入金の残高のない長期修繕計画となっている事
⑤その他
*管理組合がマンションの区分所有者への平常時における連絡に加え災害時の緊急時に迅速な対応を行うため、組合員名簿、居住者名簿を備えていると共に1年に1回以上は内容の確認を行なっている事
*都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること